魂とDNAのプロフィール

転生した記憶/DNAに宿る記憶

【魂の経歴】優しい兄を持つ障害児

 魔女狩り村長の次は、カルマだったのか、アジアのどこかで障害児として生まれた。

脳に少し障害を持ち、顔に大きなあざがあった。

人と違うのは何となくわかるけど、何が悪いのかさえわからない。

ただ、ただ、生きている感じだったが、愛情だけは感じることができた。

父の愛、母の愛、そして、何よりも兄の愛が一番強かった。

 私がようやく歩けるようになったころ、外で遊んでいると

顔にできたアザをまずは洗礼とばかりに笑われた。

私としては、人が勝手に笑っていた感覚だ。

思考回路が、恥や悔しさなどにつながるには、もう一つ能力不足だった。

直感では、思い通りにいかない身体を認識し、もどかしさがあった。

罪深い人生の埋め合わせとして、自分で選んだだけに仕方ない。

両親にとっては、私の先行きは不安でしかなかった。

私と、私の家族は大変な挑戦の人生を背負った。

とはいえ、私は顔面のアザと、脳の障害という大変なハンデのため

ただ生きている人生と言っても過言ではなかった。

一体、この人生で何を学べるというのか。

 大変遅い物心ついたころ、いじめをひたすら受けたことを覚えている。

近所の連中には、顔のアザを笑われ、酷いことを言われ馬鹿にされた。

しかし、私には意味がわからないからヘラヘラ笑っていると

さらに、嘲笑われる始末だった。

兄は、そんな時に駆けつけてくれると、私を馬鹿にする連中を

鉄拳制裁で追い払い、何度も助けられた。

私にはとても、とても優しい兄がいたのだ。

兄は正義感が強く、肉体的にも力強く、ハンサムで、両親の自慢の息子だった。

 年齢を重ねていくにつれ、私をいじめる連中は減り、避ける連中ばかりになった。

私がいることで、両親と兄は、差別的な言葉で皮肉られることが多かったようだ。

両親も、兄も、気にしなかった。

私たちは強い絆で結ばれていた。

 ただ、ある事件をきっかけに、私の一家は試練に立たされることになる。

父が仕事で失敗し、借金を抱えてしまったのだ。

大地主に頭を下げて借金をして、返済に回した。

簡単に借りられたのは、地主が兄の恋人の両親だったからだ。

兄は、恋人の両親に気に入られていたし、結婚も目前だった。

兄の力強く、芯のある精神性が、身分の差を超える魅力を感じさせた。

ただ、兄には弱点があった。

私を愛していたことだった。

 ある時、私が兄と、兄の恋人と一緒に花が綺麗に咲く野原に遊びに行った。

私は時おり、脳の障害のせいか、現在でいうてんかんのような発作が起きた。

手足をばたつかせ、最後には気を失ったりすることがある。

それがよりによって、三人で楽しんでいる時に起きてしまった。

私がばたつかせた手足が、兄の恋人を直撃し、彼女は倒れて、岩に顔をぶつけた。

大きな傷が、彼女の顔面についてしまった。

怪我した箇所が顔だったため、恋人の両親は大激怒した。

謝れば怒りが収まるレベルのものではなかった。

溺愛していた娘の顔に、一生残るかもしない傷をつけたのが

集落では一番の嫌われ者の私だったからだ。

「この害虫めが」

この事件が、私に対する差別的発言をしてはいけないという、

いわば、言わない約束のような、暗黙の空気を突きやぶってしまう。

私は、差別の対象として、一気に拒絶すべき害虫として認識された。

その後、大地主は、両親へ借した金を今すぐ返せ、さもなくば

いますぐ、こいつを殺して来いと要求してきた。

本気だった。

兄にとっては究極の選択を迫られてしまう。

どちらも嫌だったろうに。

兄は必死に謝り続けた。

兄は自分が死ぬことも考えてしまうほど悩んだ。

そして、身分の差と運命を憎んだ。

弟を殺さなければ、両親は借金まみれで死んだも同然となる。

弟を殺せば、両親は助かり、兄は恋人と結婚でき、全てもとに戻る。

兄は食べたものを全て嘔吐するほど悩み、食べることもできなくなった。

「なぜ俺がこんなに悩まないといけないんだ」

自問自答の闇に陥り、この世の理不尽さを呪った。

弟は何も悪いことをしていない。障害を持っていても、血のつながった弟だ。

でも、殺さないと両親も飢え死にするだろう。どのみち、弟も死ぬことになる。

やがて、悩むことに疲れ、兄は遂に決断をした。

 私は兄に呼ばれ、森の中へ入っていった。

もう、私は兄が何をしてくるのか、何となくわかっていた。

脳ではなく、魂で。

だから、恐怖とかなかった。

兄が、私の首に手を回してきた時、苦しかったけど嬉しかった。

最後まで兄の愛情を感じることができたのだから。

もう最後の最後は、兄の愛しか感じなかった。

兄は涙を流しながら、私の首を絞めた。

「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、ごめん、許して」

私は兄に殺されるなら本望だと感じた。

心の中で、ありがとうとつぶやいていた。

私のためにそこまで悩んでくれてありがとうと。

私は兄の愛を感じながら、この人生を終えたのだった。